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2015年10月6日 博多織との出会い

 福絖織物の工房で、大学生である私たちは、名前しか知らなかった博多織にはじめて出会いました。

絹の滑らかな肌触り、輝く美しい色と繊細な文様。博多織の魅力を知ったわたしたちは、自分たちと同じ若い世代にこの博多織を知ってほしいと強く思いました。


 「身近に感じて、身に着けてもらいたい。」一番身近で、毎日身に着けてもらえるものといえば、カバンがよいのではないかと考え、動き出しました。

2015年10月13日 カバンのアイデア出し

 いったい、どんな形状のカバンが人気があるのか。15名のメンバーで何度も話し合いを重ねました。

 

毎週、いろんなカバンのアイデアを出し合いました。浴衣でお出かけ用バック、結び目を作れるバック、旅行用バックなど…気づくとカバンアイデアは50にもなっていました。

 

なかでも特に印象に残っているものがあります。それは、日本を持ち歩くカバン。題して「春夏秋冬」というものでした。日本の四季の素晴らしさを表現しようというカバンです。博多織で春、夏、秋、冬、それぞれを表した布をつくり、それをカバンの表のポケットに入れることでカバンでも四季を味わえるというものでした。みんなからは気分によって変えることをできて飽きないし、色を黒にすればみんなとは違う就活バックにもなるよね?と好評でした。
 

残念ながらこのカバンを作ることはできませんでしたが、話し合いを重ねたことで「恋する博多Obi」も「結と織リュック」もたくさんのアイデアが詰まったものとなりました。

2016年8月18日 デザイン・プレゼンテーション

 福絖織物でのプレゼンテーション:「恋する博多Obi」誕生

 このプロジェクトでは、当初1つのカバン案を製作する予定でした。話し合いを進める中で、50のアイデアの中から、リュックとクラッチバッグの2つの案に絞られ、吉田カバンの桑畑さんに提案しました。

 

すると、「クラッチバッグをセカンドバックとして、リュックに収納して持ち運べるバックインバックにしては」という提案がありました。

 

しかし、「博多織の入ったセカンドバックをリュックの中に入れてしまうのはもったいない」、「博多織に直接触れてその良さを知ってもらうには、外に出して身に着けてもらいたい」という強い思いがありました。その強い思いを吉田カバン桑畑さんにプレゼンテーションで訴えたところ、クラッチバッグを製作していただけることになりました。

 

この博多Obiには、私たちのセカンドバックではなく、「メインバック」として使ってほしいという強い想いが込められています。

2016年9月1日 オリジナルの博多織文様

 筑前織物さんから、オリジナルのデザインで博多織を織ってみませんか、と提案していただきました。

 

早速、デザインについて検討することになりました。ツツジや梅、竹など様々な案が出る中、自分たちの住む場所をもう一度見直してみよう、ということになりました。自然豊かな福岡の後背部には背振山と油山という山々が連なっています。

私たちの大学はその山の麓にあり、鳥が飛来します。なかでも「トンビ」は大学の応援歌にも歌われ、最寄駅のロゴにもなっています。リュックにはトンビ柄がかっこいい!となりました。高く高く飛躍できるようにとの意味も込めてトンビを千鳥格子のようにした「トンビ格子柄」に決まりました。

 

一方、クラッチバック「恋する博多Obi」の方は、なかなかまとまりません。他の文様も調べるうちに、昔から日本人に馴染みのある「梅」がいいのでは、という案がでてきました。

 

梅は春の初めに咲き人々に春の訪れを知らせてくれる花です。また恋する女の子の春の訪れも知らせてくれるという意味も込めています。梅について調べていくうちに「梅結び」にたどり着きました。

 

梅結びとは、お祝いごとに使われる縁起のいい水引の結び方の一つです。意味は「固く結ばれてほどけない」で、まさにぴったりです。この「梅結び」にはどの博多織の柄を合わせるのがいいか考えました。

 

博多織を代表する柄のひとつである「独鈷柄」がいいのでは、と考えました。独鈷柄は、心の悩みを振り払う法具を意匠化したものです。その伝統の力で女の子に勇気を与えてほしいとの意味を込め、「梅結び」と「独鈷柄」に決めました。

​2016年9月23日 ファーストサンプル完成

 わたしたちが考えたカバンが、はじめて形となって目の前に現れました。見た瞬間、思わずみんなで歓声をあげました。サンプルですが、「お店で見る吉田カバン」とまったく変わりがありません。サンプルにも「魂」が込められているのを感じます。「ファーストサンプルの修正点を1週間で報告ください」とのことなので、サンプルを何度も触りながら、話し合いです。

〈恋する博多Obi〉
ファーストサンプル時には4つの修正をお願いすることになりました。
1)蓋デザインの変更
カバンデザインは、元々筒状でした。バックを開けるとすぐ荷物の出し入れができるようにするために、封筒のような形にしたいとお願いしました。
これについては、封筒の形ではフタがずれてしまい、博多織の柄もずれてしまう、との意見をいただき、そのまま筒状でいこうということになりました。
2)留め具の変更
スナップボタンではなくマグネットのボタンに変更。マグネットボタンにすることで開け閉めをより容易にすることができ、使いやすくするためです。

3)デニム生地の色合い
デニム生地の色合いをファーストサンプルよりも明るい生地にするということ。ファーストサンプルが黒色に近いデニムの色合いだったため、もう少し明るい色合いの方がデニムと認識しやすいのではないか、という理由でした。
私たちが普段イメージしているデニムの色合いに近い方が手に取りやすくなるのではないかと考えたからです。
4)持ち紐の変更
ファーストサンプルの紐はカバンとは違う黒のナイロン素材でした。そこで、カバン本体と同じ綿素材にして、細い紐を縫製して作っていただけないかとお願いしました。
紐を同じ素材にして細くすることで、華奢で可愛くなるのではないかと確信しました。博多Obiは生地の変更のみになるのでサードサンプルは作らずに商品の出来上がりを待つのみとなりました。

〈結と織リュック〉
1)背面のファスナーから荷物の出し入れ可能
立ったままリュック内部の荷物を取り出せるようにしました。

2)取っ手の強度強化
通勤通学でリュックを「からってる」と邪魔になるため、手に持つことがあります。手で持つときにも、重いリュックを提げることができるよう、耐久性を上げたいと考えました。

3)サイドポケットの生地変更
片方だけメッシュ生地にすることで、ファッション性を求めました。

4)リュック、前ポケットのサイズ変更

5)フタ部分のサイズ縮小
上部のフタの部分には元々帽子入れにしようと考えていたのですが、ボリュームを抑えるために小物が入る程度にしました。

6)中蓋巾着の除去
フタをあけたら、荷物がすぐにさっと取り出せるよう、上部の巾着をなくしました。

7)芯材を2側面に
元々は側部、底、背部4か所に入っていました。あまりに丈夫すぎるのでは、と考えました。使用しにくい芯材を底部と背部の2か所に変更。さらに底部の生地を丈夫な生地にして擦れて穴が開く恐れを考慮し強度をあげます。

以上の7つをお願いした結果、すべて改良していただけることになりました。

​2016年10月24日 セカンドサンプル完成@東京

 今回、サンプルを作っていただいているカバン製造メーカー様に打ち合わせで伺いました。「学生用手提げかばん」の製造工場として創業されたという歴史があったメーカーさんです。本社で、職人さんの手によってカバンが製作されています。
 型紙の作製・管理に2000年からCAD/CAMを導入し、これによりパソコン上でデータを裁断機に送って自動裁断ができるようにしていました。実際に裁断する様子を見せていただきましたが、とても効率的です。

 

また、タグが職人さんの手によって縫われる様子も見せていただきました。タグの縫い方は、縦8目横12目(商品によって若干異なるそうです)で、縫い終わりは必ず火で炙って糸がほつれないようにするなど、長い歴史の中で一番美しい縫い方に決められています。縫うものの素材によって1回1回糸を変え、その都度ミシンも調節。細かな生産技術の粋に私たち一同驚きを隠せませんでした。

 

本社で検品作業がおこなわれます。私たちもその様子を拝見させていただきましたが、どの部分が不良なのかさえもわからないほどでした。とても細かな部分までチェックされており、1個あたりの検品にかかる時間は「5分」。私たちは職人さんの技術に驚きの連続でした。

2016年11月2日 オリジナル博多織サンプル完成

 布は、経糸(たていと)と横糸を交互に組み合わせて織られていきます。

 「恋するゆとりプロジェクト」の博多織は、数量の関係で、横糸を浮き上がらせて文様を出すことになりました。横糸に経糸の色が重なり、布の色ができあがります。今回、経糸は白色なので、全体として淡い色調になります。選んだ糸の色がそのまま出るわけではありません。筑前織物の丸本眞知子さんにアドバイスをいただきながら、想像し、色を決めていきました。実際に織ってみないとどのような色合いかわからないところが、織物の難しさや面白さ、深みだと感じました。

 11月2日にはオリジナル博多織の試織を見せていただき、クラッチ、リュック共に色の変更を数点お願いしました。

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